ファンドラップ型サービスの「手数料控除後リターン」ランキング
 ― 主要10サービス比較 ―

2016年11月
ヘッジファンドダイレクト株式会社
金融商品調査チーム

1. はじめに

ここ数年、大手証券会社を中心に個人投資家の資産運用を専門家に任せるサービスであるファンドラップ・SMA(Separately Managed Accountの略)の残高が急増している。

一般社団法人 投資顧問業協会のレポートによると、2015年3月には直近で最高の190%の伸び率(契約件数、対前年比)を記録し、直近の2016年3月には契約件数で48万件、総額5兆7,000億円超の一大マーケットに成長している。

一般社団法人 投資顧問業協会のレポートによると、2006年から統計が始まったファンドラップの契約件数は2015年6月には48万件に達し、総額5兆7,000億円超のマーケットに成長している。

出所:一般社団法人 投資顧問業協会 統計資料 平成28年3月末より)

そこで、各証券会社の提供するファンドラップ型サービスを比較してみたい。なお、本稿は投資助言会社であるヘッジファンドダイレクト株式会社による分析であり、証券会社・運用会社サイドからは広告・販売手数料等を一切受領しない中立・独立的な立場であることを予め申し上げたい。(調査は2016年4月~7月にかけて当社実施)

2. ランキング結果

一般的な消費財が「価格」と「質」で消費者から選ばれるように、金融商品(サービス)の場合は、「コスト」と「運用実績」で投資家から選ばれる。投資家が資産運用を行う目的は資金を増やすことであるため、運用実績からコストを差し引いた「手数料控除後のリターン」という1つの軸によって、大手7社の10サービスに対して順位付けを行った。

結果は以下の通りである。

順位 サービス名 ネットリターン ①
(②-③)
過去の運用実績 ② 投資一任手数料 ③
1 SMBCファンドラップ 8.068% 年率 9.58% 1.512%
2 三井住友信託ファンドラップ 4.688% 年率 6.20% 1.512%
3 野村ファンドラップ 4.569% 年率 5.93% 1.361%
4 ダイワファンドラップ 2.855% 年率 4.367% 1.512%
5 日興ファンドラップ -2.176% 年率 -0.88% 1.296%
6 みずほファンドラップ -3.440% 年率 -1.82% 1.620%
- 三菱UFJ信託ファンドラップ - 運用期間が
1年未満の為除外
1.512%
- 野村エグゼクティブラップ - オーダーメイドの為非公表 1.620%
- 三井住友信託SMA - オーダーメイドの為非公表 1.728%
- ダイワSMA - オーダーメイドの為非公表 最低投資額が
1億円以上のため除外

2016年4月~7月にかけて調査を実施し、大手7社・10サービスについて比較・検討を行った
(ランキングの順位はネットリターンの高い順)

「ネットリターン①」について:
「過去の運用実績(年率換算)」-「投資一任手数料」で計算
「過去の運用実績②」について:
公表されている中で最も運用期間が長いものを利用、ポートフォリオが複数存在する場合はミドルリスクのものを利用。また、運用実績は各社へのヒアリング調査によるもので、実態の数値と異なる可能性がございます。
「投資一任手数料③」について:
投資額を1,000万円~5,000万円とした際の最も高い料率で計算。小数点以下4桁を四捨五入。野村ファンドラップはリスク水準によって手数料水準が変動になるため、リスク水準を普通として算出しています。

結論からいうと、ネットリターン(過去の運用実績-投資一任手数料)で最も良い成績を出したのはSMBCファンドラップ、次いで三井住友信託ファンドラップだった。販売力があり契約金額ベースで1位2位を争う野村証券・大和証券を商品力として上回った。

3. 詳細比較

1) コスト比較

本ランキングでは、投資一任手数料は個人投資家の投資金額のボリュームゾーンと想定される1,000万円~3,000万円レンジの中で各社の最低投資金額に最も近い手数料率を用いて計算した。

順位 サービス名 投資一任手数料(手数料は各区分の最大値) ボリューム
ゾーン*の手数料
(最大)
1,000万円
以下の部分
1,000万円~
3,000万円
以下の部分
3,000万円~
5,000万円
以下の部分
5,000万円~
1億円
以下の部分
1億円~
5億円
以下の部分
5億円~
10億円
以下の部分
1 日興ファンドラップ 1.296% 1.296% 1.296% 1.026% 0.756% 0.351% 1.296%
2 野村ファンドラップ 1.361% 1.361% 1.361% 1.188% 0.983% 0.983% 1.361%
3 SMBCファンドラップ 1.512% 1.512% 1.296% 1.296% 1.080% 1.080% 1.512%
4 三井住友信託
ファンドラップ
1.512% 1.512% 1.404% 1.296% 1.080% 1.080% 1.512%
5 ダイワファンドラップ 1.512% 1.512% 1.512% 1.242% 0.972% 0.432% 1.512%
6 三菱UFJ信託
ファンドラップ
1.512% 1.512% 1.404% 1.404% 1.080% 0.756% 1.512%
7 みずほファンドラップ 1.620% 1.620% 1.458% 1.404% 1.242% 0.756% 1.620%
8 三井住友信託SMA - 1.728% 1.728% 1.728% 1.188% 0.864% 1.728%
- 野村
エグゼクティブラップ
- - 1.620% 1.404% 1.156% 0.832% -
- ダイワSMA - - - 3.240% 3.240% 3.240% -
*ボリュームゾーン:個人投資家の投資金額のボリュームゾーンと想定される1,000万円~3,000万円レンジ

出所:各社サービス資料の公表データを拠り所として当社調査済み、2016年4月~7月)

2) リターン比較

運用実績の比較については、直近開始したサービスや新規の組み入れファンドも存在するため、運用実績も5年・10年平均等の長期の実績が分かる統一の指標は存在しない。そのため、厳密に正確な比較表ではないが、各社サービスの運用実績を年率換算で示した表を作成した。なお、投資家がラップ口座を通じて投資信託を購入した場合の信託報酬は控除されたものを運用実績としている。
(ランキングは年率換算の運用実績が高い順、運用実績が算出できないサービスは除外)

順位 サービス名 年率換算の運用実績 運用期間
(シミュレーション期間含む)
1 SMBCファンドラップ 9.58% 2010年11月末~2015年11月末
2 三井住友信託ファンドラップ 6.20% 2009年2月12日~2016年2月末
3 野村ファンドラップ 5.93% 2001年1月~2015年12月末
4 ダイワファンドラップ 4.37% 2008年8月末~2016年2月末
5 日興ファンドラップ -0.88% 2006年11月20日~2016年6月17日
6 みずほファンドラップ -1.82% 2014年12月末~2016年4月6日
- 三菱UFJ信託ファンドラップ 運用期間が1年未満の為除外 -
- 野村エグゼクティブラップ オーダーメイドの為非公表 -
- 三井住友信託SMA オーダーメイドの為非公表 -
- ダイワSMA オーダーメイドの為非公表 -

出所:各社サービス資料の公表データを拠り所として当社調査済み、2016年4月~7月)


総括

ラップサービスについて金融庁の見解を紹介する。「平成27事務年度版 金融レポート」によると、金融庁は、ファンドラップについて、運用対象の投資信託の5割から7割が、販売会社の系列運用業者によって設定されたものであることを指摘し、投資対象の選定プロセスの透明化に向けた取り組みはいまだ途上にあると指摘している(同p69)

個人投資家としては、利益を上げることが目的である以上、販売会社の手数料稼ぎに利用されることなく、海外にまで視野を広げて「手数料控除後の過去実績」がより高い金融商品・サービスを利用するべきであろうことは論を待たない。

チャールズ・エリスの「敗者のゲーム」によると、運用の専門家に任せる場合は10年以上の長期スパンで考える必要があるとされている。

しかし、日本の大手証券会社の提供しているラップサービスではまだ10年以上の運用実績が無く、優れているという評価は与えがたい。ラップサービスに限らず、そもそも、過去10年以上、年率10%以上の実績を有する金融商品は日本には1本も存在しない(2016年2月末現在)。

それであれば、視野を日本だけに狭めずに、”「過去10年実績で年率10%以上の実績」のある海外の運用会社”に資産運用を任せることも、個人投資家にとって有益な選択肢になるだろう。

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